老人医療と福祉の課題
老人病院の運営と課題
佐藤 健二
1
1城山病院
pp.170-173
発行日 1982年2月1日
Published Date 1982/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541207680
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近年,医療に関する様々な問題が国民の関心を集め,中でも総医療費の増大は,国の財政問題と関連して論議されている.一方,迫り来る「高齢化社会」を目前にして,老人の問題は,社会問題として考えていかなければならない側面が増大している.医療の分野においても,老人の問題は「老人医療」として,特に一般の医療から区別してとらえられ,その問題点について語られるほどである,しかし,近年の「老人医療」に関する論議の多くは,経済的視点からの論議であって,真に老人の医療をどうすべきなのか,といった,老人の生命と生活,という視点からの論議は,あまりにも少なかったように思う.
昭和55年に厚生省は,老人保健医療制度に関する試案を発表し,その後,老人保健法案として国会で審議が進んでいる.また,昭和56年6月には,異例とも言える方法で,診療報酬の改定が行われた.これらは,どのような大義名分があるにせよ,その内容は,医療費の増大に歯止めをかけ,その増大の一因である老人医療費の増大に歯止めをかけようとする,経済的視点が当初からあったと思わざるを得ないものである.こうした社会的動向の中で,実際に老人の医療に専念している民間病院が,適正な医療と健全な経営を維持してゆくためには,多くの難問を解決していかなければならないと考える.
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