医療の周辺 人間工学—病院建築への提言・3
トラフィック(人の流れ)
古川 俊之
1
1東京大学医学部医用電子研究施設
pp.600-601
発行日 1980年7月1日
Published Date 1980/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541207198
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病院の混雑はしばしば指摘される問題の一つである.かつては外来の雑踏は日本の病院につきものの欠点であるかのごとき議論もあったが,アメリカの総合病院でも外来診療の機能が重視されるようになると,同じような混雑風景が見られるようになった.予約制度があっても混雑に変わりがないということは,建物の構造にも一半の責任があることを思わせる.
実際に総合病院内の人の流れを調査した結果によると,①各部門の配置が良くないために複雑な流れとなる,②診察,検査,薬局などの部門でそれぞれ30〜60分の待ち時間がある,③移動に要する時間が無視できない,などが明らかにされている.また料金前納方式が移動回数を増すこと,短い時間帯に受診者が集中することも指摘されている.更に詳しい分析では,部門間の移動に要する時間はボアソン分布となると予想されるが,現実には更にすその伸びた形となる.つまり自然なバラツキによって説明できない移動時間の遅れがみられる.そうした例からインタビューによって事情を調べると,目的とする場所が見当たらなかった,方向を誤って回り道をした,という回答がほとんどである.もちろん待ち時間を予想して,入院中の知人を見舞いに行ったという要領の良い人もあるが,これは例外である.
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