特集 診療録の保存と利用
医療情報資源としての診療録—コンピュータによる情報処理とその問題点
三宅 浩之
1
,
川辺 昭
1
,
小笠原 聰
1
,
戸川 登美子
1
,
田丸 恵津
1
,
田中 美智子
1
1関東逓信病院
pp.207-213
発行日 1980年3月1日
Published Date 1980/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541207099
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医療に関する詳細な情報を記録する手段として診療録が存在することは周知のことであるが,医療情報の資源としての診療記録の取扱いが十分に行われているかという質的内容にまで立入って考えると,現在でも多くの問題が残されている.診療の記録の保存という物の取扱いについては法的に規定があり,また,十分な医療経過の記載があるという前提で医学研究目的も含めて永久保存を行っている施設が多い.しかし,一方保存されている診療録の内容が十分利用され,活用されるような医療情報の管理・体制の整備は,やっと最近話題に上るようになってきた段階である.
更に医療情報の処理と有効利用という立場で診療記録をみると,その記録が最もひんぱんに利用されるのは医療の現場で次々と経過が記録されてゆく診療録の作成過程であろう.この時点における医療情報の交換利用手段とその記録の集積として診療録を見るならば,医療に直接関連する医学的な一次情報はすべて診療録の中に集積されているはずである.ここで診療録とは医師の記入する病歴(カルテ)部分のみではなく,図1に示すように,医療関係者のすべてが分担して作成している診療に関する情報を患者単位に集約した物であると定義しよう.
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