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病院の原価管理—第1回 各部門を総合的にみる(上)
黒田 幸男
1
1済生会中央病院
pp.58-59
発行日 1979年1月1日
Published Date 1979/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541206756
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最小原価で最大成果
病院における原価管理が難しく,かつ実用化されにくいのは,原価計算が病院では種々の事情により実施しにくいことと,現行の医療費決定要件として原価計算結果が利用されないことがその原因となっている.特に個々の診療行為になると,病院によって,また疾病の程度によって,人,物,時間のかけ方が異なり,標準的原価の把握はもとより,費消される各種原価にバラツキが多いこともあって,それが原価管理のもつ意味合いを稀薄にさせている.いわば医療とは個別性の高いものであって,原価管理の対象とするにはなじみ難い要素が多すぎるのである.
しかし,医療が現実に行われる場を考えてみると,そこでは多種多様の診療行為がひとつの方向性をもって繰返されていることから,原価管理的考え方によってそれを統制することは可能と考える.すなわち一つ一つの診療行為の原価管理は難しいが,部門単位では適用の可能性が高いのである.すなわち病院管理者の立場は,病院全体管理の視野から,人,物,金,技術を中心にした基礎体制作りをどうするかで,病院の経済的体質はそれによって大きく左右される.部門管理担当者は,その部門における固定体制(人,設備,器械機具)の操業度の高揚と材料などの変動費の節約,適正使用の管理に努め,現場従業員には原価意識の滋養に役立つような方向を目標としている.
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