精神医療の模索・6 長期在院と社会復帰
精神分裂病の慢性化の問題をめぐって
市橋 秀夫
1
1東京都立松沢病院
pp.506-509
発行日 1978年6月1日
Published Date 1978/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541206575
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長期在院患者は多くの精神病院で年々増え続け,常に現実的な問題として対応を迫られている.とくに歴史の古い病院ほどその対応に苦慮しており,昭和51年度の松沢病院の統計1)でも,在院患者の平均年齢が男子47歳,女子50歳であり,平均在院年数は男子13.9年,女子13.5年であり,まさしく老人病院の様相を呈している.在院患者のうち72%が精神分裂病(以下分裂病)であるため,長期在院化の現象の分析の対象を分裂病に焦点を合わせて論じてゆきたい.
筆者が定床48名の一男子慢性開放病棟を3年間担当して,10年以上の長期在院患者だけで30名の患者が退院していったが,その時の退院患者の平均年齢は実に55歳であり,松沢病院での平均在院期間は25年であった.その病棟の位置づけは古い作業患者のたまり場というところであり,こうした慢性化した患者のケアや社会復帰活動を通じて得られた知見は,ささやかながら興味深い問題が提起されたように思われる.
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