病院の窓
不況下における病院経営
黒田 幸男
1
1済生会中央病院
pp.105
発行日 1978年2月1日
Published Date 1978/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541206439
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低成長経済下における不況は今後10年は続くと予想されている.一般産業界では大幅な操短を余儀なくされ,倒産が相次ぐ中で雇用問題が大きくクローズアップされ,まさに昭和初期の大恐慌以来の大型不況といわれている.
病院は不況に強いといわれているが,今日のように重装備,近代化された病院体制下における本格的不況を迎えた経験はなく,いわば新しい体験ということができる.この模索の時代ともいうべき難しい時期に当り,今後,病院が進むべき道を決めることは至難なことと考える.一方,不況といえども医療の進歩を妨げることはできない.人口構成の高齢化と疾病構造の多様化は,より充実した医療の発展を求めることから,当然なことながらいろいろな形態の医療需要の増加が考えられる.病院はそれらへの対応として人的,物的,技術的な医療体制の整備を考えることになるが,長期間にわたると予想される不況の時代にあって大型投資の適否について懸念を持つのは私だけではないだろう.医療の世界では平常時においても設備整備に当っては,①将来の経営収支見込み,②借入金償還,金利負担能力の持続性,③患者需要の見通しという,設備投資の回収,吸収が可能かどうかの判断は難しいものである.今日のような不況時代にあっては,ことさら,投資の過剰化への恐れ,将来展望の不透明さに対する不安などのため基本方針の決定を躊躇することが多い.
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