当直医日誌
—産婦人科当直日誌より—「新しきもの」その2
正田 滋信
1
1聖路加国際病院産婦人科
pp.49
発行日 1977年7月1日
Published Date 1977/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541206276
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2月○日日曜日どうやら外妊破裂をきたしたらしい.ただちに輸血を開始する.麻酔医は,アメリカ帰りのDr.Oである.Dr.Oは,覚醒状態で挿管するという.awake intubationである.full stomackの患者の気管内挿管において,挿管前に嘔吐して誤嚥することが最も恐ろしいからである.麻酔の教科書に書いてあったのは覚えていたが,実際にみるのは初めてである.最近は,同じawake intubationでも,NLAなどをうまく用いることにより,患者の苦痛をかなり取り除き,しかも患者の協力も得られる方法が確立してきたが,当時はまだ完全覚醒状態での気管内挿管が一般的であった.
それはさておき,意識のある状態で気管にものを入れられるのであるから,それは患者にすれば苦痛極まりない.見ているこちらも,喉にものがつかえた時の苦しさを思い出してしまった.そうしているうちに,Dr.Oは難航しながらも無事挿管をおえ,麻酔に入った.Dr.Kの指示により,再度ダグラス窩穿刺を施行,今度は20mlの血液が難なくひけた.腹部の膨隆状態からすると,2,000ml以上の腹腔内出血が疑われたため,血液銀行に連絡,血液の追加を頼む.いつものことながら,救急手術になると血液銀行のTさんが呼び出されるのであるが,嫌な顔一つせずわれわれに協力してくれる.
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