読者の声
もう一度後方を振り返れ/病院図書室のかたすみから
I
pp.83
発行日 1977年2月1日
Published Date 1977/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541206163
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最近できる病院は,みな実に立派で,特に大都市の病院は,われわれ地方の病院にくらべるとまるで別世界のような感じがする.冷暖房完備で,ICUとかCCUとかいった設備も整い,医療機械なども,1台何千万から何億もするようなものが揃っている.そのために,建設費や運営費にも莫大な金がかかるようになり,それが最近の国民医療費の急増の大きな原因にもなっている.この勢いがこのまま続いたらどうなるだろうかと思うと空恐ろしくさえなる.
確かに,それは病院医療の進歩と言ってもよいだろう.しかし,社会全体として見た場合,果たしてそこに問題はないかどうか.もう一度反省してみる必要はないだろうか.前進することはいい.また必要でもある.しかし,もしそれによって,後方の部分に対する配慮が失われ,そこでの働きの重要性が忘れられることになったとしたら,社会は,得たものよりも余りにも大きなものを失うことになるだろう.
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