特集 医療法と病院
戦後の病院と医療法の功罪—医療法と病院の30年
吉田 幸雄
1,2
1聖マリアンナ医科大学
2元厚生省病院管理研究所
pp.19-24
発行日 1977年1月1日
Published Date 1977/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541206114
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戦後急速な病院の発展を見るようになった.これは単にわが国のみではなく,世界的の現象である.それは社会・経済の進化に従って,医療においてもより充実した医療形態への需要が高まった結果である.すなわち,医学・医術の進歩は医師の専門分化と医療設備の重装化を促進した.それのみならず住宅の合理化は患者の収容施設の需要を増大せしめ,そして特に世界的傾向として,今世紀各政府は,社会保障・社会福祉・公衆衛生の伸展につづき,医療の社会政策を発展せしめるようになり,ここにいわゆる近代病院の普及を急速に推し進める結果となった.
この現象は第2次大戦後の顕著な歴史的現象である.時あたかも終戦直後の昭和23年に医療法が制定せられ,わが国としてはじめて病院と診療所を法制約に機能分化し,病院の発展の基礎が与えられたことは意義が深いといわねばならない.しかしその後の30年間の情勢の変化にもこの方法は良く対応しえたものかどうか,そして今後もこれで良いかというと多くの議論がある.この法は医師法・歯科医師法等の医療関係者の身分法に対し,医療の施設法といわれるものであるが,その内容には病院と診療所のあり方および公的医療機関問題等を含めた医療提供の仕組みに関係した問題を含んだものであるから,医療制度の基本問題の旧民的コンセンサスが前提とならねば根本的改革はありえない.
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