特集 救急医療
東大病院における救急医療の状況
三井 香児
1
,
都築 正和
2
1東大救急部・脳神経外科
2東大・中央手術部・救急部
pp.27-30
発行日 1975年3月1日
Published Date 1975/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541205569
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
医学・医療における大学病院の位置は,大学病院本来の性格からして必然的に定まっているべきであるが,救急医学・医療においては様子が異なるようである.それは救急医学が単に外傷や一般疾患の急性期という観点でのみとらえられ,救急医療が地域医療的色彩を持つという具合に認識されているからであろう.現に救急医療を日常業務として行っている大学病院はきわめて少なく,救急医学の研究と教育は,関連する各科の片手間に行われているのである.
しかし急性重症疾患は,いまだその病態が未解明なものも多く,したがって治療法の研究も今後の発展に依存するところが大きい.一例をあげると,重症頭部外傷は,脳神経外科の進歩により,頭蓋内血腫を除去すれば救命しうるものも確かに増加したが,特に最近問題となっているのは脳損傷や血腫の圧迫による急性脳腫脹である.これは,たとえ救命されたとしても,往々にして植物状態となり,社会問題ともなっている.このようなことを考えるならば,大学病院が救急医学・医療に果たすべき役割は大きく,責任は重いといえよう.
Copyright © 1975, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.