今日の精神医療 23
精神科医療へのボランティア活動の導入
増田 陸郎
1
1東京都目黒保健所
pp.74-79
発行日 1974年11月1日
Published Date 1974/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541205487
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まえがき
文化が進めば進むほど,人間の社会生活を法律によって統制する分野が狭められ,人間の自由意志判断によって行動する範囲が広げられていく.考えてみると,われわれが毎日支障なく平和に暮していけることは,大部分が法律によるよりは,他人の自由意志による支えがあるからである.したがってわれわれが気づかないが,コミュニティとはボランティアすることで成り立っている.そのような行動を少し整理して,自意識にのせ,ある具体的な目的に向かって行動する場合,とくにボランティアと表現している.
さて,ボランティアは一般にどのような意義をもっているかというと,それぞれの国の文化水準によって異なるが,たんなる行政の補完行為の段階から進んで,行政では絶対に満たしえない精神的部分を満たすためにコミュニティの一員として自発的に行動することである.したがって本来の理念からいって医学や福祉の分野ではボランティア活動がなければ完成しない部分があるはずである.ただ残念なことにボランティア活動をチャリティ(慈善)としてとらえた過去の考え方のゆえに,善意の強制,富める者が富まざる者に,強き者が弱き者に,健康者が病者に,ある行為を恵み与えたり,同情したり,時に軽べつするというニュアンスが真のボランティア活動の発展を妨げてきた.
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