病院と統計
国民所得と消費性向
石原 信吾
pp.10-11
発行日 1973年8月1日
Published Date 1973/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541205063
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経済の高度成長という言葉は,いまではもうすっかり聞きふるされた言葉になってしまったが,ここに掲げた‘国民所得1人あたりの年次推移’の図をみると,その‘高度成長’という言葉が今さらながらの実感をもって迫ってくる.42年から47年までの5年間で,それは文字どおり倍増している.その前の5年ごとをとって見ても,32年から37年までが85%増,37年から42年までが90%増と増加率はきわめて大きい.とにかく,30年にはまだ約8万円で10万円にも達していなかったものが,わずか15年あまりの間に9倍近くの70万円にもなっているのであるから,ちょっと信じられないほどの増加ぶりである.
経済企画庁の発表によれば,今年の1月から3月期の調べでは,国民1人あたり年間所得の推定額はついに3千ドルを越したという(1ドル=297円03銭).これまでの各国の経験からすると,国民1人あたり所得が3千ドルを越すと,一般の人々の意識はガラッと変わるというから,わが国にも当然同じような現象が起こるものと見なければならない.ことさらに‘立身栄達’を求めるという後進貧乏国の一般的風潮から,もっと楽天的な身辺的安逸を求めるという方向への変換が大きくかつ急速に見られるようになるのではなかろうか.
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