特集 快適な病室の条件
よりよいベッドまわりのために
上林 三郎
1
1聖路加国際病院作業計画室
pp.33-37
発行日 1971年11月1日
Published Date 1971/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541204491
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
入院した患者のために,よい診療・看護が必要であるように,患者の病状に適した病室の環境づくりも患者の回復のために重要なことは衆知の事実であるが,往々にしてこの三者の関係がうまくいかず,患者から苦情を受けることがある.
病気で心身ともに傷ついている患者にとって,病院の白いベッドと白い壁に囲まれ,1人臥すことの心細さは,健康人の一人旅で泊まるホテルの個室以上の冷たさと違和感を抱かせるにちがいない.特に日本式の寝室になれた老人には,どんな豪華なベッドよりも,看護婦さんや補助の人たちの運んでくれた一輪差しの花や,あたたかいことばがどれほどありがたかったかしれないなどの話は,よく入院した方たちから聞く話である.ドックのような比較的元気な患者ならばいざしらず,一般の病室では,設備・什器のよさはもちろん必要であるが,なによりもあたたかい感じの環境が必要な気がする.旅に出てりっぱな旅館やホテルで,豪華な寝室に泊まってもかえってよく寝つかれず,わが家のせんべいぶとんでやっと安眠が得られたりすることや,以前病院管理研究所の看護の講師の方から,入院した患者がトイレや洗面所の汚いのに驚いて,極度にトイレに行くのがつらくなり,術後の容態がはかばかしくなかったのが,退院して自宅に帰ってゆっくりトイレへはいったら,回復がまるっきりよくなったというような話を思い出すと,病室のベッドまわりにはまだだいぶ問題があるように思われる.
Copyright © 1971, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.