研究と報告【投稿】
日本における職務給導入上の諸問題—職務給の病院適用への前提的考察
菅谷 章
1
1病院管理研究所
pp.111-115
発行日 1971年1月1日
Published Date 1971/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541204224
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職務給採用上の利点
職務給とは‘同一労働力・同一賃金’(または‘同一職務同一賃金’)の原則に立って,‘職務分析’と‘職務評価’によって,職務の相対的価値序列を決定し,その評価と賃率とを結びつけた賃金形態であり,同一職務に関するかぎり,だれでも同一標準能力で標準的な作業量・作業能率を遂行していくことを論理的に予定している賃金形態である.職務給が,このように本来職務に基づく賃金(その意味において合理的な賃金形態)であり,横断的賃率の1つの形態であるとするなら,職務給は労使双方にとって次のような利益をもたらす.
まず使用者側にとっての利点からいえば,職務分析や職務評価によって職務の内容が明らかにされ,その職務が必要とする労働力の条件(=資格要件)が明確化されるので,その職務に必要な人員を算定(定員管理)することが容易となる1).そして企業が必要とする労働力の採用ならびに配置は,資格要件を基準にして行なわれるので,適切にこれらに対処できるばかりではなく(採用管理・配置転換),さらに資格要件に合致した教育・訓練を実施することが可能となる.職務給の前提となる職務分析がアメリカで特に発達したのも,労働者の定員・採用・配置・教育訓練などの労務管理を,経営的な立場で総合的・合理的に実施しようとする意図があったからにほかならない.
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