病院経営戦前戦後・5
非常時の対策(2)
山元 昌之
pp.88
発行日 1970年5月1日
Published Date 1970/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541203967
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病院は24時間だれかが起きているから,火災はめったに発生しない,という意見を聞くことが再々ある.めったに発生しないということは,絶対に発生しないということではない.われわれは万に一つの場合にも,患者にまちがいのないよう,ふだんの準備を怠ってはならない.火災になってしまうと,低層の木造より高層の鉄筋のほうが始末が悪い.
前回にも触れたように,階段が煙突になって使えない.続いて廊下が煙道になる.エレベーターは止まる.こういう最悪の場合の患者避難をどうするか.インキュベーターをどうするか.この問題は新築する場合に,設計の段階で十分考慮することが,まず第1に望ましい.私は,かねがね,階段のほかに避難用の斜路を,建物の外壁に設けるのがよいと思っている.これがあると,担送・護送も楽にできるし,また独歩患者なら暗闇の中を,手すりを伝って楽に避難できる.病院の新築や増築の相談を受けるとき,このことを提唱するのだが,これは普通の避難階段よりも面積が多く取られるので,予算的に困難であったり,また設計者もデザイン的に好まないらしく,いつも抹殺されて残念に思っていた.
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