病院の広場
小児慢性疾患病院のひとつのあり方
近藤 文雄
1
1国立療養所西多賀病院
pp.17
発行日 1969年9月1日
Published Date 1969/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541203723
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病院はいかにあるべきか,を考える方向には2つある.1つは,病院とは何ぞや,という定義から出発する演繹的方向であり,他は,社会が病院に対して何を求めているか,もっと広くいえば,社会が病気に関連して何を必要としているか,ということからする帰納的方向である.現実には常にこの2つが同時に考えられているわけではあるが,経営者によってそのいずれに重点をおくか,ニュアンスに違いがある.前者に固執すれば独善に陥って時代の変遷についていけなくなり,後者が出すぎると従来の病院の概念からはみ出したものができ上がることになる.
実際上,社会が病院に要請するものは複雑であるから,各種各様の病院が存在するのではあるが,それはあくまでも,社会の要請にこたえるたあの多様性でなければならない.病気に関連しての社会の要請のうち,従来の病院の範疇で処理できることと,できないことがある.しかし,この両者は必ずしも画然と区別できるものではなく,また,時代とともに変化するものでもある.そのうえ,病人と呼ばれる人間は,病気以外にもいろいろな人間的悩みと要求をもち,それが満たされることを望んでいることが多い.そのような場合,病院は従来もたなかった新しい機能をつけ加えることによって,それにこたえたり,さらには,病院以上の機能を合わせもつ総合施設へと脱皮するのも自然の方向といえるであろう.
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