特集 病院の倫理
病院と倫理
吉田 幸雄
1
1病院管理研究所
pp.23-28
発行日 1967年6月1日
Published Date 1967/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541203102
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人間は社会的人間であって,社会の中で生存するかぎり,互の生命と人格の尊厳を認めあう倫理性が要求されることはいうまでもない。しかし各人が持つ倫理性あるいは価値観は,時代や社会や個人によって,その性質や深さに違いがあり,具体的な道徳的行為についても趣きが違うことがありうる。しかし個人が集団を作った場合には,その集団の社会的行動に対し,関係する社会はその集団に対して共通の倫理性を要求し,またその集団は集団の組織に対して共通の倫理性を要求することとなる。この集団の一つである病院事業体には,世界的に共通の特殊な倫理性が存在すると見ることができる。すなわち本題の病院の倫理とはこの問題であると解する。したがって病院の倫理という命題は,(1)病院を組成する組織の人々はいかなる倫理性を持たねばならないかという問題と,(2)病院経営体が社会に対していかなる倫理性を持たねばならないか,という問題に一応分けて取り扱うことが便利であろう。
以下述べるものは,わが国の現時点における病院共通の倫理問題についての私見であり,当然私個人の倫理観に立って論述されるものであるから,読者によっては違った観念のものもあるかもしれない。
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