事務長某月某日
頭の痛い病院経済
長野 信正
1
1四国中央病院
pp.36
発行日 1966年2月1日
Published Date 1966/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541202780
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昨秋,日本経営者団体連盟総会の席上,前田専務理事は恒例の労働情勢報告の中で「国民の税金でまかなわれる給与にはペイ・ポーズ(賃金凍結)の思想でのぞむべきだ」と指摘し,相当の反響を呼んだ。実際,今のように賃金と物価がイタチごっこを続けていたのでは,いつまでたっても労働者の実質賃金は良くならない。年々ふえて来る病院の赤字のさまを見ていると,残念ながら前田理論を肯定せざるを得なくなる。
ところで,病院の火の車の原因は何か。一応勤労者の給与規準のようになっている公務員の給与は,ここ15年の間に13回ベース・アップされ約4.6倍となった。一方物価の上昇は年々とどまるところを知らず,消費者物価指数はこれも15年間で2倍を超えている。この間に医療費は6回改訂されただけ,しかも毎回スズメの涙程のお情け改訂で,70%程度の上昇に過ぎぬ。これでは赤字にならないのが不思議で,少々の利用者増くらいでは穴埋めできない。政府も医療費の根本改訂の必要を認めながら,医療実態調査を前提条件とし,医師会は絶対反対を唱えている。国民を納得させるような代案も出さず,しゃにむに反対する医師会もだがいやがる医師会を押えつけてでも実調をやらねば改訂できぬと頑張る厚生省の態度もいただけない。医療の実態を知りたければ,他人の台所をのぞくまでもなく自分で経営する国立病院・療養所があるではないか。要請があれば他の公的病院も協力にやぶさかではあるまい。
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