特集 病院と医療制度
開業医と病院
春日 豊和
pp.41-46
発行日 1966年1月1日
Published Date 1966/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541202761
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大きなステンレス枠の1枚ガラスの自動ドアーは自然に開いた。いわゆるゴージャスを極めた待合室には美しい大きな日本人形や,フランス人形も飾られ,清々として美しく生けられた草花がふんだんにおかれ,時に私は病院にあることを忘れ,新築のホテルのロビーにいる錯覚さえ催す。そしてそれが本当であり,そうあるべきだと自問し自答する。
さらに私は仲間に誘われて,善美を尽した設備に驚嘆を発しつつ歩を進める,○○室,××室…と学生のころ夢みていた私の医人としての未来図が,白衣姿の自分とともにその壮美な構図の中で立派な画面を作る。私は気も遠くなり,驚喜し,胸の鼓動はいやが上にも高鳴る。学生のころと異なり,手術野は手にとるごとく,そしてインターホーンを介しての術者の懇切な説明は,これまた私自身が手術をしているような錯覚までも…,そして控室に戻れば大きな撮影機を狙いだ映画専門の先生は,これまた手術衣でまことに甲斐甲斐しく立ち働いている。
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