病院の広場
欧米の病院ところどころ
小山 武夫
1
1東京都済生会中央病院
pp.13
発行日 1965年6月1日
Published Date 1965/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541202586
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一昔以上も前の話である。渡米のとき方々の病院を参観したが,とくにニューヨークのコロンビア大学プレスビテリアン・ホスピタル,シカゴやロスアンゼルスのカウンティー・ホスピタルの規模の大きいのには,ただ瞠目するばかりであったが,なかでも,プレスビテリアン・ホスピタルでは,院長のマッキントッシュ教授の厚遇をうけてCPCに列席したり,昼食の接待にもあずかったりして好感を与えられたので,ニューヨーク滞在中毎日のように訪問し,院内のすみずみまで参観し,いろいろの人たちに面接して話をきいた。
その中でも,同院の企画部長とか宣伝部長といった若い某氏に面接したときの話は,はなはだ興味をひいた。アメリカでは病院は営利事業ではなく赤字経営のものが多いそうだが,当院もその例にもれず,前年度の決算で何十万ドルかの赤字を出し,これを公表したところ,金満家の未亡人などの遺産を含めて赤字に数倍する寄付金が集まって黒字経営に転じたという。病院経営は上手に赤字を出し,これを巧妙に世間に宣伝することが一つのコツであると聞いて,さすがアメリカは違ったものだと感心したものだ。院内ところどころ壁のタイルを剥がし,騒音が廊下にひびきわたっているのを見てきいてみたら,少しでもこわれているところがあれば,こうやって大げさに修理するのが病院の活動ぶりの宣伝になると聞かされた。
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