特集 病歴の中央化
病歴中央化実現への問題点と打開策
中央化制度のできるまでの経験と意見
虎の門病院の場合
浅井 一太郎
1
1虎の門病院診療部
pp.18-20
発行日 1965年2月1日
Published Date 1965/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541202510
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
今から30年以上前,昭和13年の夏だったと思うが,偶然の機会に米国オレゴン州立大学附属病院をくわしく参観することができた。当時私は大学病院の医局で若い臨床医としての歩みを始めてわずかに数年,病床の患者を受け持ち,病歴を書き,臨床検査を自分でやり,そして外来患者を診て働いていた時期である。そうした時期の私にとってひとつの驚異として映ったものは臨床検査技師の活動と中央病歴室の活動がその最たるものであって,今日でも鮮かにその時の光景を思い浮かべることができるぐらいである。将来日本にもこのような病院ができたらどんなに医師の仕事がやりやすくなるだろうかと羨望を禁じ得なかった。その後戦争になってマライ半島に従軍し,クアラルンプールの熱帯医学研究所に配属され,自分で約600床の一般病院であった附属病院を運営することになり,ここでも同じように中央病歴室があって,整然たる病歴の整理,保管が行なわれていることにもういちど驚いたしだいである。ここでは明らかに総婦長制が採用されていて,今日の日本の大病院と同じ看護体制があったことにも印象深いものがあった。
約10年前虎の門病院設立の話が具体化して,大槻院長の下に石原事務長や幡井総婦長とともに集まった時に考えたことは,これを機会にひとつの新しい病院の姿を具体化してみようということであり,これが大槻院長が院長を引受けられた第一のお気持であったと思われる。
Copyright © 1965, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.