特集 医療社会事業
入院患者取扱い上におけるサイコ・セラピーの効用
森脇 要
1,2
1愛育研究所
2立教大学
pp.26-29
発行日 1964年4月1日
Published Date 1964/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541202322
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長期に亘る入院生活が,患者にいろいろな不満や不安を与えていることは,関係者に十分知られていることである。患者たちの不安や不満はいろいろである。自分の身体でありながら,自分の思うようにならないこと,いろいろな苦痛,回復の希望に対する不安,いろいろな行動あるいは活動の制限,種々の欲望あるいは欲求の制限等に対する不満,家族や病院から十分な配慮が払われていないのではないかという不満,自分や家族の経済状態に対する不安,退院後もとの職場に戻れるかあるいは希望するような適当な職場にもどれるであろうかという不安,こうした不安や不満は人それぞれによってそれぞれ特殊である。こうした情緒の不安定は多くの患者の入院生活における不適応行動を生じ,また病気の回復自身も著しくおくらせているように見える。こうした情緒不安を除くことが出来れば,ある程度医師や看護婦の患者の取扱い方を容易にし,また病院中での適応をよくし,入院患者の管理を円滑にすることが出来るであろうということは昔から考えられており,医師や看護婦達が本来の医学的治療の外に多くの努力を払っていることである。しかし,こうした情緒の不安は,それがはげしい場合には,病院関係者の能力の限界以上であることもまた経験的に理解されている。こうした問題を解決するために,アメリカでは,メディカルケース・ワーカーや,ソーシャルケース・ワーカーを採用することによって,多くの成功を治めている。
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