病院管理講座 理論編・14
病院の組織(XI)—管理者論(その2)
吉田 幸雄
1
1病院管理研究所
pp.94-100
発行日 1964年2月1日
Published Date 1964/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541202294
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前号では,病院管理者の病院組織全体に通じた義務について述べたが,本号においては,医療業務に対する義務について述べよう。
わが国の病院管理者すなわち病院長は医師であって,多くはその病院の医師の中では,臨床医として最も経験のあるものであり,名声の高いものが管理者の職に当てられている。しかし,病院管理者というものは病院組織全体を包括的に管理することが職務であるから,いかに臨床医として有能であっても,臨床に従事することよりも,その包括管理の職責をはたすことが院長たるゆえんでなければならない。このことはちょうどオーケストラの指揮者がかりにヴァイオリンの名手であっても,楽団全体を指揮して,良い交響楽を演奏せしめる役割を演ずることが職務であるのと同様である。従って指揮者は指揮者としての専門性が要求され,奏者としての能力は問題にならない。これに類似したことは映画の監督,野球の監督,建築の監督,会社の社長等同様な性格であって,病院だけが論外ではない。
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