霞ガ関だより
医療制度調査会の答申について
T.S
pp.92-94
発行日 1963年5月1日
Published Date 1963/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541202132
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医療制度調査会は,さる3月23日,厚生大臣に対して「医療制度全般についての改善の基本方策に関する答申」を提出した。その後,各新聞社はこの答申に注目して大々的にそれを報道すると同時に,ただちにその解説や社説を掲載した。各紙の解説記事には,多少の見解の相違がみられたが,その多くが云おうとしたところは,たとえば,朝日新聞が報道したように,「開業医中心の改革案--社会保障制度審議会の答申とくい違う」というものであった。
しかし,今回の答申の内容を熟読すればわかるように各紙のこれに対する批判は,医療制度調査会の真の考えを正しく理解した上で述べられたものではないと思われる。このような誤解が生じた主な理由は,戦後の医療施設の急速な整備と,医療保障制度の急激な拡大のムードのなかで,医療の社会化とその推進役の一つとしての公的医療施設の拡充が必要であるという通念が,国民の間に次第につちかわれてきたために,自由主義社会における医療保障制度下の医療制度は如何にあるべきかという新しい観点から,現在の諸制度を検討し,その将来の方向を打ちだした今回の答申が,国民にきわめて奇異な感じをあたえたからではないかと思われる。
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