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一社会学徒の見た病院—S病院における戦後の制度的変革と実態を中心に
姉崎 正平
1
1東京都立大学大学院社会学
pp.23-28
発行日 1962年12月1日
Published Date 1962/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541202018
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I.はしがき
筆者が社会学を勉強する立場にある関係上,上記の様な題にしてみたが,結局は「素人の病院見学印象記」という事にほかならない。極めて偶然の機会に病院乃至は医療制度について社会学的方面より勉強してみないかと勧められ,"百聞は一見に如かず"と一年間にわたりS病院見学の便宜が与えられた。筆者は元来丈夫な方ではなかったが,幸い病院の御厄介になる程の事もなく今日に至ったし,医学に興味を覚え,医者になろうと思ったこともなかったので,この方面についての問題意識や知識は限られたものであった。
先ず医師の間で取り交わされる言葉も分らず,看護婦さんの包交介助について行って,『ガーゼを取って』といわれても,手で取っていいのか否か分らず,『鋸子で』といわれても鋸子なる物が分らず途惑った。又看護婦さんの中には自分達の職業を世間がどう見ているかという事に関心の強い方も多く,看護婦になるためには高校卒業後3年間の専門教育を受ける事,深夜勤のある事,そして患者さんの生命を預かるこれ程尊く大変な仕事をしている事を世間の人達は知っているだろうか,又看護婦について偏見をもっていないか,筆者自身は病院に来る前どうだったか,という質問に何度か出会った。
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