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病院ブーム—日本の病院10年間の発展
吉田 幸雄
1
1厚生省病院管理研修所
pp.551-554
発行日 1959年7月1日
Published Date 1959/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541201541
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I.はじめに
今から10年前のわが国の病院の状態は,全く戦禍の大きな傷手にうごめいていたといつても過言ではないだろう。全国の主要都市は戦災によつて病院を焼失し,辛じて乏しい財政の中からバラツク建築の病院が復興し始めた状態であり,幸い焼失をまぬかれたが,戦災を被らない病院といえども,その建物や設備は永年修理の出来ないままに放置されたままの状態で且つ食糧事情から自炊を余儀なくされた患者の七りんから立上る煙で壁天井はすすけるにまかせるという,実に惨たんたる有様であつた。そしてこの病床も,50%を僅に上廻る程度にしか利用されていないような状況であつた。
しかるに,現今においては,大都市には1床当り数百万円の巨費をかけ,冷暖房の設備さえされた近代建築と設備をほこる高層巨大の大病院さえ出現するようになり,また農村地帯でさえ,その地方の中心に数百床を有する永久建築の近代的設備の病院が整備されるようになり,その病床の利用率も85%以上を上廻るというようになつて来て,この僅か10年の間の日本の病院の状態は,その容ぼうを一変し全く今昔の感にたえないものがある。
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