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病院史概説(11)
岩佐 潔
1
1厚生省病院管理研修所
pp.53-56
発行日 1955年2月1日
Published Date 1955/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541200927
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XII.16世紀及び17世紀初頭の病院
1.宗教改革と病院
人間中心の近代文化が南ヨーロツパのイタリアを中心とするルネツサンスの運動として輝しい華を開いて来たことは前回述べた所であるが,この同じ人間精神が北ヨーロツパでは少し遅れて宗教改革となつて発現した。これは宗教的信仰の内化と自律をもとめる運動であつたが,教会の全面的頽廃とその兇悪な圧制,法皇庁が現世的利益の増進のために精神的権威を平気で利用してきたという積弊が,その原因となつている。法王が免罪符を発行することによつて宗教課税の目的を達していたことに対して公然と反対の叫びをあげたのはルツターであつた。1517年のことである。この運動は次第に勢力を延しつつあつた各地の諸候にとつても都合よいものであつだので,ルツターの破門にも拘らずその興奪は次第に拡まり北ドイツを中心に新教徒の数は急激に増加した。
所でルネツサンスの人間中心の明い文化を呼吸した人々は中世的な暗い修道院の生活に強く反撥した。長い間各地に陰然たる勢力を持つていた修道院はかかる時代の趨勢の前にその威力を失わざるを得なかつた。
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