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外科医療器械に対する知見補遺
吉田 信夫
1
1東北公済病院
pp.13-15
発行日 1954年10月1日
Published Date 1954/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541200874
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外科医は器械を用いて医療を行うので,器械に対する常識は当然持つていなければならない。然るに大学教育は学問と技術の拾得にのみ偏重しているので,臨床教育の盲点になりやすく,我々が新設病院に赴任する際には,経済学の面で苦労して自らその道を開拓して行かねばならない現状である。近時病院管理学が大学に講座を設けられる様になり,社会人としての常識教育が大学に於いても取り上げられつつある。実地医家にとつては学問は大学より輸入するが,逆に輸出するようなテーマはこんな方面に多々ひそんでいる様に思う。我々外科医が新しく病院を設立する際,技術に先立つて,手術場の設計とか器械の整備ということが重要になつてくる。これらに全く無関心であつて,創立者の責任を,果事が出来ようか。この意味で勤務医にしても,外科医として必要と思われる医療器械に対する私見を述べて見たい。
扨て医療器械は製造過程も簡単で,原価が低廉であるのに他の器械に比べ特に高価である。これは手工業で一般日用品に比べ,医師を相手とするので需要が低い点が考えられる。又,医師は比較的器械に関しては割に無関心であつて,業者に全て任せ切りである事が考慮すべき点であると思う。もつと器械に関心を持つて来れば業者も一段と器械の品質の向上と価格の低廉に努力するであろう。藥剤師が藥品に対する如く医師が器械に対して,日常の診療を合理化するためにももつと関心を持つことが大切なのである。
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