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血液銀行開設を顧みて—国立東京第一病院の場合
鳥居 有人
1
1国立東京第一病院
pp.31-36
発行日 1953年9月1日
Published Date 1953/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541200695
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2,3年前迄は「血液銀行」という言葉が非常に物珍らしく感ぜられたが,現在は既に全国に10数ヵ所を算し,諸所に準備中の声を聞くに至つた。また今後設立しようと考えて居られる病院も多いであろうが資金,規模,運営などの点で疑問を抱いておられることと思う。私達は国立東京第一病院においてささやかながら血液銀行を開設し1年近く運営して来たのでその経験を発表し,今後開設されようとする方々の参考にもと筆をとつた次第である。
血液銀行の主旨は"迅速,安全に多量の輸血を行う"ことであるが,東京においては輸血協会の制度が発達し電話一本で30分位の内に供血者が到着するので,一刻を争う急性大出血を除き時間的には大抵の場合,間に合う状態である。しかし遺憾ながら其の供血者の質においては相当劣る現状である。即ち厚生省の告示にあるGB1052以上の者は極く僅かであり,梅毒反応もその検査間隔が長く,また稀ではあるが型判定の誤りがあり,更に惡質なものとしては他人名義のカードを持参する者さえ有るとの由で,安全に輸血を実施するという条件には適していない。地方の都市においては供血者を直ちに用立てることが非常に困難の為,"迅速"という点においても満足出来ない現状の様である。私達の病院においても血液銀行の必要性を痛感し,殊に外科方面において手術時の保存血輸血の要望が大きかつたので昨年始めより設立の準備を開始した。
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