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Dr. Moriya's Recordtape
守屋 博
pp.51-52
発行日 1953年6月1日
Published Date 1953/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541200664
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(23)名人藝について
戦後我国に輸入された米国調と云うものに何となく,我々はなじめない点がある。その根源という物については色々に云われているが,私は大量生産,格一品と云う所にあるのではあるまいかと考える。独逸風に考えると,über alles,一つの世界最高の物を造る為には他のすべての物をぎせいにしてもよいと云う事である。焼物一つつくるにもあらゆる土,あらゆる釉薬をぎん味して最高の窯で最高の職人をつかつてやろうと云う事である。その為には各親方は自分専用の道具を自分自身で訓練した弟子共につかわせねばならぬ,出来合の百貨店で売つている様なものでは間に合わぬ。出来たものは数が少く,しかも高価である。大衆の利益とははるかに縁のないものであり,次の進歩から云うとどれも袋小路になつている。
医療についても同様の事が云える。個々の名医はそれぞれ自分専用の器械をつかい,自分専用の弟子と,自分専用の看護婦がいないと気がすまぬ。勿論この様にすべてのものを自分に合わせてつくれば,よりよい医療も手術も出来るであろうが,その為には,大変な無駄と,不能率を覚悟せねばならぬ。
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