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見學記—ホテル
今村 榮一
1
1病院管理研修所
pp.49-51
発行日 1952年7月1日
Published Date 1952/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541200514
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私たちの頭には病院といえばたゞ醫療ということだけが,浮かんでくるが新しい病院管理の教えるところによれば,病院は患者へのサービスと醫療とを合せ持つところなのである。Hospitalという言葉はHotelと近縁關係にあるそうだが,病院の性格にはサービスということが根本になつているというのは眞實であろう。私たちは病院におけるサービスを説かれたとき,はじめは取りつきようのない奇異の感さえ持つたが,病院の在り方を反省してみれば極めてありふれた事がらであるのに氣付き,今まで取り上げられることの少かつた點をむしろおかしく思う位であつた。
健康な人々はホテルとかデパートとか設備やサービスの良いところへ行くが一度病人になると設備もサービスも不十会な病院に押しこめられる日本の状況はおかしいと言われてみればそれもそうだと思われる。なるほどデパートには冷房裝置はあつても病人のための病院で冷房裝置をそなえている病院が日本にあるだろうか,變なたとえだが,よくいらつしやいましたとおしぼりを持つて來そうな病院もみあたらない。しかし身も心も弱つている病人にとつてみれば温かく迎えいれられることは注射をされるよりはありがたいに違いない。
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