--------------------
書評 助産師と同じ目線の高さ故の圧倒的な迫力と臨場感―宮崎 雅子 写真・文『Mother いのちが生まれる』
島 義雄
1
1葛飾赤十字産院・小児科
pp.729
発行日 2012年9月1日
Published Date 2012/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541102350
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
いわゆるフォトエッセイである.永年にわたって妊娠・出産の現場を撮り続けてきた,このジャンルでは第一人者の女性写真家が,自らライフワークの集大成と位置付けた作品集で,厳選の75葉と自身の軌跡を二部に章立てた構成となっている.第一部に集められた写真たちは,評者の仕事柄関連のある分野の医学・看護系の雑誌で既に見覚えたものも多く,いつもなら“やわらかく”その扉を飾ったり,あるいは専門的な記事の合い間のページにひっそり挟まる構図で記憶していたのだが,ここではひとまとまりとなって強い調子で主張をしているかのようだ.それが何で,それはなぜなのか,第二部まで読み進めば得心がゆく.
女史は修行時代にやがて本業とする写真のテーマを探しながら,「妊娠していたわけでもないのに参加した」地域の出産準備クラスで,助産婦(当時)という職業の存在を知る.新しいいのちの誕生を助ける仕事,女性ならではの仕事,そしてなんとも美しい「助産婦」という言葉の響きにすっかり魅了される.以来,お産の現場をフィールドと定め,プロフェッショナルの魂を持った誇り高い「助産婦さん」とのいくつもの邂逅を経る.そしていつしか,自ら昼夜を問わず雨風も厭わずお産に駆け付ける,まるで「助産婦さん」そのもののような写真家として現在に至ったようである.
Copyright © 2012, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.