連載 病院管理フォーラム
■病院原価計算手法の再考─手法論から活用論へ①
原価の定義とその範囲の再考
渡辺 明良
1
1財団法人聖路加国際病院 事業管理部 財務経理課
pp.72-75
発行日 2012年1月1日
Published Date 2012/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541102187
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近年,病院原価計算に関して,多くの研究者や実務家による取り組みにより,論文・書籍や学会発表などが数多く見られるようになった.また,その歴史的展開は終戦後の提唱期から病院原価計算要綱が公表された発達期,1990年代半ばからの実践期を経て,現在は多様期を迎えていると言われている1).これは病院経営において,原価計算の実行と活用の必要性が認知されてきたことの表れとも言える.
2007~2011年9月の約5年間において,「原価計算」をキーワードに医中誌にて検索を試みたところ,52の文献が抽出された.このように,年間10本以上の論文などが執筆されている状況や,その内容も様々な手法に言及した論文であることなどからも,多様期を迎えた病院原価計算の実態がうかがえる.特に,総原価を対象とした部門別原価計算が中心であった病院原価計算の手法だけでなく,「医療原価」や「医業管理費」区分を明確化したうえで,各職種の主観的感覚である貢献実感を基にした「シェアリング」方法を用いた診区方式による原価計算の提案など,多様な原価計算手法に対する取り組みも行われている2).また,これらは論文に限らない.学会発表や研究会活動などを通じて,その手法を病院経営に活用するための検討や議論も行われている.
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