連載 医療マネジメント 21世紀への挑戦・6【最終回】
新・病院経営戦略―21世紀医療マネジメントの導きの糸
長谷川 敏彦
1
1日本医科大学 医療管理学教室
pp.702-707
発行日 2011年9月1日
Published Date 2011/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541102095
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2002年,筆者が『病院経営戦略』という教科書を上梓したのは,戦後日本の病院業界をリードした国立病院管理研究所(以下,病管研)が46年間の役割を終え,国立保健医療科学院(以下,科学院)に統合され,消滅することの鎮魂のためでもあった1).その7年前の1995年,九州の国立病院での経営の実務を終えて病管研に着任した時,それまで経験と勘と度胸(KKD)による泥臭い病院経営の現場に,経営科学(Management Science)を導入しようと決意した2,3).病院経営を「先輩や失敗から苦労して学ぶ」のではなく「研究により改善を加え体系的に学べる」ようにしたかったからである.前述の拙著はいわばその試みの「中間報告」であった.
しかしこの15年間で,病院経営は未曾有の激動期に突入した.6年前,科学院を辞する直前には病院幹部への講演で「もう何を話してよいのかわからない」と嘆じて不評を買った.そしてここ5年,「視界ゼロの病院業界」はさらに混迷を深めている4).ある会議では「5年後,10年後の病院の姿を病院経営幹部が描けない病院は消滅する」と言い,またある雑誌には「病院業界は今後3~5年,血の海,焼け野原」と書き顰蹙を買った5).しかし,これからの10年,特にここ5年はさらに大きな転期が訪れることが想定される.
今回,半年に亘って病院業界の諸課題を大局的観点から分析し,われわれが直面する問題の構造が浮かび上がってきた6~10).
そこで最終回となる今回,視点を医療提供側に移して,10年前の病院経営戦略を発展させ,新たな戦略の形を模索してみたい.
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