連載 アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第186回
病院霊安室
八木澤 壯一
1,2,3
1東京電機大学
2日本葬送文化学会
3火葬研
pp.560-563
発行日 2010年7月1日
Published Date 2010/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541101741
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翔子は鎖骨下の切開創のあと,横隔膜に沿った創にも針を通す.峯が糸を切り,崎田が結び,また峯が余分な糸を丹念に切った.
あたかも本当の手術をした痕のような縫合線になっていた.
三人で合掌するとき,翔子は峯の厚意に気がつく.わざわざ縫合させたのは,弔いの気持を味わわせるためだったのだ.ちょうど骨を拾うときの安らかな気分になっていた.
「秋野先生,おつかれさま.遺体はこれから霊安室の方に運ばせます.そこで業者が湯灌と死化粧をしてくれるはずです.警察への報告書はわれわれがまとめます」
峯が労をねぎらった.
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