連載 図説 日本の社会保障
医療・年金・生活保護・1【新連載】
日本の社会保障
泉 孝英
1,2,3
1滋賀文化短期大学
2(財)京都健康管理研究会
3京都大学
pp.78-79
発行日 2009年1月1日
Published Date 2009/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541101370
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連載にあたって
「医療崩壊」という言葉が,巷間,飛び交っている.しかし,崩壊は医療だけのことではない.年金も介護も崩壊の危機が叫ばれている.生活保護費削減も課題となっている.自由競争社会の中にあっての弱者救済策,社会不安を防ぐ対策である「社会保障」の崩壊は,わが国の国家として存続が問われる問題である.
医療費が大きな問題になっていることを否定する医療関係者はいない.しかし,実際には,医療費問題は,個々の医療機関(病院,診療所)と支払機関(全国健康保険協会,健保組合,共済組合,国保組合など)の収支問題として議論されることが多く,「社会保障下における医療・医療費のあり方」「適切な医療を妥当な医療費でどのように実現するか」の具体的論議は,ほとんど行われていない.わが国における医師の技能集団である日本医師会は「国民のためのより良き医療制度をめざして」のタイトルを反復,主張している.しかし,基本は「低負担・高福祉」の域を越えるものではなく,現実的・具体的な提言には至っていない.
本連載は,医療関係者が,医療・年金・介護・生活保護という社会保障の根幹に関わる問題を考える前に承知しておかねばならない「日本の社会保障」の経緯・現況・課題について,特に,社会保障に要する費用と財源を意識した資料の集約を企図したものである.わが国における社会保障下の医療,医療のあり方を考えるうえでの,1つの参考資料となることを期待したい.
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