連載 病院ファイナンスの現状・27
―今後の病院ファイナンスの展望―療養病床転換と既存借入金返済の問題
福永 肇
1
1国際医療福祉大学医療福祉学部医療経営管理学科
pp.926-930
発行日 2006年11月1日
Published Date 2006/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541100415
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今月は療養病床削減(医療型療養病床削減・介護療養型医療施設廃止)に伴う個別病院の既存借入金返済問題について考えましょう.医療政策では療養病床 23 万床の老健や有料老人ホームへの転換が推進されます.しかし病床転換以前の再編進行段階において,慢性期病院が,収入減少や借入金返済に伴う資金ショートを起こす可能性があることを今月号で説明します.資金ショートで銀行不渡りを 2 回出すと,実質上,倒産です.療養病床再編に対する政府の金融支援施策が行われるでしょうが,この資金問題は個別病院にとっては今後数年間の,最も大きな経営課題の一つになると思います.
■療養病床数 6 割削減
今年 6 月 14 日に医療制度改革関連法が成立し,①療養病床 38 万床は 6 割の 23 万床を削減,②介護療養型医療施設は 2012 年 3 月 31 日に廃止,が決まりました.筆者には昨年 12 月に療養病床の再編が突如課題になり,十分な世論形成がなされないまま 6 月の国会にて “医療型療養病床数削減・介護療養型医療施設廃止” が決まったように思われます注 1).削減数の 23 万床という数字も突然に出てきたように思われ,算定根拠は把握できていません注 2).国会での決定事項はたしかに国民の意思ですが,国民や医療・介護関係者などの意見,38 万人の患者とその家族の意見,削減する病床数の妥当性,病院の経営問題,患者・家族の社会混乱,老後の生活安全という課題に対する議論がもっとなされるべきではなかったのか,と筆者は思います注 3).
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