- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
人間は,体と心と精神(魂)を所有する統一体である.その体と心と精神(魂)は決して分離されるものではなく,同時性を意味する.
臨床の場における看護の対象は,体と心と精神(魂)を所有する統一体としての個人であると捉えられる.看護は,そのような人間のクオリティ オブ ライフ(以下,QOL という)に焦点が当てられており,その QOL とは,その人が「より良い状態で生きることへの願い・喜び」であることとして考えることができる.
その人の QOL は,その人がどんな生き方を選択し,どのように生きているかを問うものである.そしてその生き方は,その人のスピリチュアリティと大いに関係がある.
人間は,家庭や社会の中で家族や他者とつながりを持ち,また,ある者は神仏とつながりを持って日常生活を営みながら生きている.
人は,何かに向けて親密なつながりの感覚を持つことができると,肯定的な気持ちになれ,喜びや感謝や勇気や希望が湧き,人生に対して充足感や満足感を味わう体験をすることができる.その体験は,より一層スピリチュアリティを高めることに繋がっていくものである.
しかし,病気や家族の死という危機状態に直面すると,人はストレスに陥り,不安,恐れ,悲嘆,怒り,無力感,疎外感,孤立感,絶望感など,様々な感情や実存的な苦しみの体験をする.それは現実の病苦を受け止められないこと,自分を取り巻く人々から遮断されること,自分にとっての有意義な仕事から遮断されること,日常生活の営みが阻害されることなどが,その人の世界の中で渦巻くことによって生じる.
これはスピリチュアルペインを伴う病気体験である.本稿では,そのような病気を体験する患者のスピリチュアリティと看護師の関わりについて,看護の本質はヒューマンケアであるという立場に立って論じてみたいと思う.
Copyright © 2005, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.