Japanese
English
特集 音楽療法
音楽療法の理論と方法
Theory and Methods of Music Therapy.
村井 靖児
1
Yasuji MURAI
1
1国立下総療養所精神科
1Department of Psychiatric Medicine, National Psychiatric Institute of Simofusa.
pp.434-438
発行日 1987年7月15日
Published Date 1987/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518103815
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
音楽療法は,音楽がもつさまざまな音楽と人間との関係を使って,病気の治療や障害の軽減に役だてようとする,広い意味での精神療法だと定義することができる(表1).
音楽と人間の関係とは,例えば音楽を聴くこと,音楽を演奏すること,楽器で音を作り出すこと,といった音楽へのかかわりかたの違いばかりでなく,音楽を聴いたときに聴き手の中に起こる生理的・心理的な作用,音楽を演奏した際のお互いの気持ちの疎通,楽器を練習することによって得られる感覚の訓練や協応運動や情緒性の育成といった,音楽のもつ諸々の機能を包括している.
また広い意味での精神療法とは,音楽療法家が,音楽を媒体として,自らの言葉や精神療法の技法を使って,患者に働きかけるという面のほかに,音楽そのもの,もしくは音楽をする行為それ自体がもつ,心に働きかけ,心の状態を変えていくという音楽の広い意味の非言語的な心理作用を利用することを指している.
音楽と人間の関係の実態は,現在科学的に充分解明されているわけではない.気象や地震が人間の精神の状態に何らかの影響を与えても,その実態が未解明のように,音楽と人間の関係についても未だわかっていない点が多い.したがって本稿で述べる事柄も,多くは仮説の域を出ないことを最初におことわりしておかなければならない.
Copyright © 1987, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.