とびら
Negligenceとは
荻原 新八郎
1
1金沢大学医療技術短期大学部
pp.847
発行日 1981年10月15日
Published Date 1981/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518102493
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その1:某病院理学療法科のセラピストは整形外科外来から回されてきた右膝関節退行性関節炎の患者を受け持つことになり,治療としてホットパックを使用した.その際セラピストは「熱すぎるようだったら知らせて下さい」と患者に頼み,そのまま患者を置き去りにした.翌日患者は「先生,右膝に大きな水ぶくれができたのですがホットパックがよく効いたのでしょうか」とセラピストに尋ねた.セラピストはすぐにこの事を上司に報告すると共に事故報告書にも記入した.
その2:ある理学療法士養成校の某学生はある病院にて経験豊かな臨床実習指導者のもとで実習中であった.学生はまだ松葉杖諸動作については学校で学んでいなかったが,松葉杖で歩いている患者をこれまで幾人か見ていたし,また自分自身も二年前に膝を怪我した時に松葉杖を使ったことを覚えていた.ところでこの病院の理学療法科では最近新しい松葉杖を購入したばかりであった.事故のあったその日,学生は臨床実習指導者からある患者の松葉杖歩行を指導するよう頼まれた.実習指導者は学生が松葉杖諸動作をまだ履修していないことをすっかり忘れてしまっていたが,学生は日頃この指導者から大変目をかけられていたこともあって患者と指導者の面前で自分を見くびりたくなかったので同意した.そして必要な測定を行った後この太った患者を松葉杖で歩かせた.床は乾いていた.機能訓練室のほぼ半ばまで行った時,患者は突然ドシンと音をたてて倒れ右橈骨を折った.事故の後で綿密に調べてみたところ右松葉杖にひびが入っており,購入時にこれが発見されていなかったことが判明した.
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