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長い間,実に長い間,希っていた,将来教育の分野で,仕事をする人々のための予算が,認められたと,昨年末知らされた.一生懸命希ったり,なかなか実現されないので,もう駄目だとあきらめたり,投げ出したくなったり,投げ出したら終りだと,また,望みをかけ直したりした結果得られた,本当にうれしいニュースであった.昨春,大谷国立療養所課長,辻課長補佐はじめ,学院スタッフとの話し合いのとき,教えるにふさわしい人材育成の必要性を,私達は心をこめて,しかも,日本の切実な問題として,お話しした.課長は,黙して聴いておられたが,最後に,「いたしましょう.」といわれた.ニュースが入ったときには,信じがたいような不思議な気持であったが,日が経つにしたがって,そのうれしさは,格別に大きくなった.
学校を開設するには,まず教師の準備が必要だが,毎年学生が卒業し,10年になるのに,教師にふさわしい人材に対する方策が,遅れて,どうしても国からの手が打たれなかった.日本の理学療法の水準を上げて,質の高いケアを患者さんに提供出来るようになるためには,養成機関の段階から考えたい.十二分でない基礎教育を受けた卒業生が,卒後研修に必死で励げむよりも,よい基礎教育と,更にレベルの高い教育・卒後研修の方が,時間とお金がかかるようで,長い目でみれば,結局上手なかけ方であろう.理学療法士が必要だから,その学校をつくる.学校には先生が必要だから,先生を探しまわる.と,必要にせまられてその場しのぎでは,その中にまきこまれる学生も,教師も,関係者も,本来ならばしなくてよい苦労をする.実を結ばせるための苦労なら,惜しまない.けれども,より以上の時間・お金をかけながら,しなくてよい苦労を重ねながら,実りは遅く,十二分でない.もっと希望のあるかけ方を,やはりしたい.
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