Japanese
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特集 失調症
失調症の病態生理
Pathophysiology of ataxia
志田 堅四郎
1
Kenshiro SHIDA
1
1九州大学神経内科
pp.315-323
発行日 1973年5月15日
Published Date 1973/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518100620
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はじめに
‘失調(ataxia)’ということばは一般に‘調子が乱れている,すなわち不規則な状態’という意味で用いられている.語原的にはa=not,taxis=order;disorderで正常な順序や配列が失われていることを意味している.しかし医学上の用語として運動失調を定義する時には別の意味で用いられている.
歴史的には1846年Bouillaudは随意運動で筋力に異常がないのに運動が円滑に行ないえないことを協調運動障害(discoordination)と考え,これを運動失調(ataxia)と呼んだ.その後運動失調に関する臨床的研究はJaccoud(1864)2),Leyden,Vulpian,Foerster(1902)3),Frenkel(1907)4)らにより主として脊髄癆のような病気で深部感覚障害による運動失調について報告された.更に失調症に関する症候学の完全な記載は20世紀初頭のBabinski,Andre Thomas,Holmes5)らによってなされ,小脳性運動失調が明確にされた.Babinski1)は脊髄傷害による失調のみをataxieとした.学者によっては小脳疾患に伴うもののみを協調運動障害(incoordination)と呼ぶことがある.しかし現在ではこのような区別は用いられていない.前庭迷路性運動失調を確認したのはBarany,Babinski,Hautant(1927)6)De Kleyn7),Barré8)およびRademaker9)の研究によるが,同時に前頭葉,視床性,頭頂葉性失調が記載された.
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