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はじめに
アメリカやヨーロッパでは女性にみられる癌の中で,乳癌が一番多い.日本では子宮癌が第一で,乳癌は第四番目となっている(昭和44年度の厚生白書による).統計的にみると,乳癌の発生率は地理的要素と生活環境に影響されていることが判明している.生活環境が欧米的になりつつある日本の将来の傾向に関心を示している科学者もいるようである.すなわち,母乳で子どもを育てることから人工栄養で子どもを育てるようになってきている事実と乳癌発生率の関係が注目されているわけである.乳癌の発生率は中年または中年を越した独身女性に最も多く,結婚して,しかも子どものある女性では比較的少ない.
けっきょく,乳癌の原因としてホルモンのことが考えられているが,その原因はまだ判明されていない.
乳房切除術(mastectomy)前・後の理学療法の必要性はすでに認められているし,治療内容も確立されている.たとえば,アメリカでは理学療法士のほかに,作業療法士,臨床心理学者,ソーシャル・ワーカー,そして医師がチームを作って乳房切除術患者のリハビリテーションを活発に行なっているセンターもある.
Mastectomyを受けた患者のリハビリテーションの目標としては,①外観,②患側上肢のROMと機能面の維持および回復,そして,③心理面の適応が考えられる.
目標の中の③番目―患者の心理面―に関しては,特に十分な考慮が払われている.すなわち,女性のシンボルとして考えられている身体の一部が消失してしまったことに対する患者の反応と適応の状態に注意深い配慮が必要であると考えられているからである.アメリカでは臨床心理学者やソーシャル・ワーカーによって,グループ・セラピー(group therapy)またはグループ・ディスカッションが行なわれている.これは患者同志の話し合いを通して,新しい事態に順応するように方向づけることがその目的とするところである.
Mastectomy に対する理学療法は術前に始め,引き続いて術後も行なう.患者の外観のためコスメティック用のブラジャーはできるだけ早目に与えたほうが良い.患者が家庭の主婦であれば,夫の理解と協力が得られるように,夫の指導も行なうことがたいせつである.
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