特集 中耳真珠腫最新の知見—病態から治療まで
III.後天性真珠腫・小児真珠腫
幼小児真珠腫—病因と病態における特異性
村上 嘉彦
1
1山梨医科大学耳鼻咽喉科学教室
pp.907-914
発行日 1987年10月20日
Published Date 1987/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492210397
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
I.はじめに
小児の中耳真珠腫の発生頻度は成人のそれに比較して低いという事実は認められている(Palvaら1),sheehy2),Jahnke3))が,これは小児では疾患の罹病期間が短いことが主な理由に挙げられているようである。そのためもあってか,小児の中耳真珠腫に関してその臨床像や病因論,病態(病理学)などを成人のそれと比較して詳細に分析,検討した文献は国内,国外を問わず多いとはいえない。とくに本稿の標題のような病囚と病態における特異性を論じた研究業績は,筆者の知る限りではかなり乏しいといわなければならないのが現状と考えられる。近年になっていわゆる小児耳鼻咽喉科学(pediatric otolaryngology)という名称のもとに出版された成書や教科書の類はかなりの数を挙げることができるが,このような冊子においてすら小児の中耳真珠腫に関する記載は不十分といわざるをえず,たとえ述べられていたにしても必ずしも満足できるほどの情報を与えてくれないように思われる。
したがって標記のような主題で小児の中耳真珠腫の病因と病態の特異性について論ずる場合の主な情報源としては,筆者のこれまで得られた臨床経験から生まれた内容であり,さらには乏しいとはいいながらもこれまで断片的ながら発表された文献における小児真珠腫に関する記載からということになる。
Copyright © 1987, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.