鏡下咡語
エントロピーの法則よりみた中国医学
藤井 一省
1
1東海大学医学部耳鼻咽喉科学教室
pp.472-473
発行日 1987年6月20日
Published Date 1987/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492210327
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単に生態系や地球にとどまらず宇宙にも及んだ視野でエネルギーというものを考えるとき,そこには大別して二つの大法則が存在する。第一の法則は熱力学の第一法則あるいはエネルギー保存の法則と呼ばれるもので,エネルギーというものは形は時に変化しても量的にみればそのトータルは常に一定に保存されており,失われることもなければつくられることもないという法則である。端的な例で説明すると,石油ストーブで石油を燃やした場合熱とガスと水(水蒸気)ができるわけであるが,これらに含まれるエネルギーの総量は石油が本来保有せるエネルギーと同等ということである。つまりエネルギーの形は変化してもエネルギーそのものは決して失われることなく,常に一定に保たれているのである。
第二の法則は熱力学の第二法則あるいはエントロピー増大の法則と呼ばれるものである。この法則はドイツ人のクラウジウスが1854年に定義したもので,前記の石油を燃やした場合に生じる熱・ガス・水蒸気のうち,ガスと水蒸気は石油ストーブによる暖房のためにはもはや使えないという具体的な例で説明できる法則である。つまりこのさいのガスと水蒸気というエネルギーは,暖房に関しては仕事をする能力を持たず無秩序に拡散するだけであり,この仕事に変えることのできない量をエントロピーと称している。したがって石油を燃やすようないわばエネルギーの変換を起こすと,そのつどエントロピーが生じ増大していくことになる。
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