特集 扁桃—今日の臨床指針
VI.扁桃と悪性疾患
扁桃と悪性疾患
犬山 征夫
1
1慶応義塾大学医学部耳鼻咽喉科学教室
pp.889-892
発行日 1985年10月20日
Published Date 1985/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492210045
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I.はじめに
UICC(国際対がん連合)のTNM分類1)では扁桃は中咽頭の側壁に分類されている。国立がんセンターの統計2)によると頭頸部癌の中で最も発生頻度が高いのは口腔癌であり,ついで喉頭,鼻副鼻腔,中咽頭の順で,口蓋扁桃から悪性腫瘍が発生する頻度は比較的高いといえる。一方口蓋扁桃はその表皮は屯層扁平上皮に被われ実質はリンパ組織からなっているため,発生する腫瘍もそのほとんどが扁平上皮癌か悪性リンパ腫であるといっても過言ではない。筆者は昭和40年から昭和59年までの20年間に106例の扁桃悪性腫瘍を経験した。その組織型は扁平上皮癌が32例,悪性リンパ腫73例,悪性神経鞘腫1例であった。また悪性リンパ腫と扁平上皮癌との比率は2.3:1であり,これをわが国においてこれまでに報告された数値と比較的してもほぼ同様で扁桃悪性腫瘍の約70%は悪性リンパ腫である3)といえる。これに対して欧米では扁桃悪性腫瘍において悪性リンパ腫の占める割合は約30%でかなりの違いが認められる。
以上により本稿においては口蓋扁桃の癌および悪性リンパ腫を中心にその臨床的特徴および治療の現況について述べてみたい。
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