特集 扁桃—今日の臨床指針
IV.他科領域と扁桃炎
小児科医からみた扁桃炎
市橋 治雄
1
1杏林大学医学部小児科学教室
pp.849-853
発行日 1985年10月20日
Published Date 1985/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492210038
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はじめに
小児科の一般外来を訪れる患児の80%は急性疾患で,その大半は急性気道感染症であり,しかも急性気道感染症の過半数が上気道感染の感冒症状を呈する急性鼻咽頭炎や急性咽頭炎,急性(咽頭)扁桃炎で占められていることはわが国も欧米先進国も変わりがない。
急性気道感染症の病因(表1参照)の大部分はウイルスによるもので,急性(咽頭)扁桃炎もその例外ではなく,原発性細菌性扁桃炎の主起炎菌として挙げられるものはA群溶連菌のみであるが,これも全扁桃炎に占める割合はせいぜい15%以下とされている。インフルエンザ菌,肺炎球菌,黄色ブドウ球菌などがしばしば咽頭培養で分離される。これらはウイルス気道感染の細菌二次感染として中〜下気道感染症における病因的役割は無視できないが,急性扁桃炎の発症病因としての意義は必ずしも明確ではない。なおジフテリア,ヘルパンギーナ,伝染性単核症を呈するEBウイルス感染などでも急性扁桃炎の症状がみられるが,これら特殊なものはここでは除くことにする。
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