特集 耳鼻咽喉科と感染症
IV.感染症の諸問題
菌交代現象と菌交代症
池本 秀雄
1
Hideo Ikemoto
1
1順天堂大学医学部内科
pp.853-859
発行日 1980年10月20日
Published Date 1980/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492209160
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I.菌交代現象と菌交代症の定義
化学療法剤ことに広スペクトルム抗生剤を長期にわたって連用すると,目的とする起炎菌は減少し,あるいは消失するが,同時にもとの感染巣または人体の他の部位で耐性菌が異常に増殖することがある。このような現象を菌交代現象という。ときには新しい感染症にまで発展することがあり,このような疾患を菌交代症という。耐性菌は患者のからだに生息するものもあれば,他人や物体を介して伝播されるものもある。
菌交代症は,もともとは1952年にフランスのBrisou1)が発表した選択と交代による慢性感染症aflrection chroniques par microbisme selectionneet substitueという論文から故久保郁哉教授が翻訳した言葉であると聞き及んでいる2)。Brisouが当時唱えたのは,化学療法に伴い先行の感染病巣に新たに耐性菌が定着し,症状が増悪することであったが,その後は前に述べたように,いっそう拡大したものとして了解されてきている。
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