臨時増刊特集 問題となるケースの治療のポイント
I.感染症
抗生物質の的確な使用
9.菌交代症
根岸 昌功
1
Masayoshi Negishi
1
1東京都立駒込病院・感染症科
pp.2082-2083
発行日 1983年12月1日
Published Date 1983/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402218550
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抗生剤を投与して感染症を治療する際,使用抗生剤の副作用を考慮に入れるが,それ以外に,使用抗生剤に耐性を示す菌の勢力にも注目する必要がある.抗生剤投与中ないし投与終了後に,臨床症状が悪化あるいは遷延化し,同一病巣ないし他の部位から投与抗生剤に耐性な他の菌が有意に分離されることがある.この現象は菌交代症と呼ばれ,1952年Brisouによって報告された.菌交代症の発生頻度は明確ではないが,Weinsteinら1)は抗生剤を投与された感染症の2.2%に発生したと報告し,Walkerら2)の報告では0.7%の発生頻度であった.強力で広範な抗菌力のある抗生剤が普及している現在では,相当な数にのぼる菌交代症があると思われる.したがって,抗生剤投与の際は,使用抗生剤の抗菌範囲を知っておくこと,臨床症状の悪化ないし遷延化がみられた場合には常に菌交代症の可能性を考慮に入れていることが必要であろう.次に症例を呈示し,その実際を述べてみる.
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