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I.はじめに
3者併用療法の普及によって上顎全摘術を行わずとも治癒する上顎癌症例がふえてきた。しかし,現状においては癌の根治のためには3者併用療法後に一次的にであれ,または再発癌に対して二次的にではあれ,上顎全摘術を行わざるをえない症例も少なくはない。
筆者らは上顎全摘術または拡大全摘術後の欠損の大きい症例,特に①下顎骨上行脚周囲の骨または腱が露出した症例,②眼窩骨膜をも含めて眼窩周囲骨を広く切除した症例,③顔面皮下組織を上顎組織と共に切除した症例,④中頭蓋底を広く露出した症例,に対しては主としてD-P皮弁を用いた一次的再建術を行ってきた1)。しかし,D-P皮弁利用の際には術後の一定期間,頸部の動きを制限しなければならないという欠点がある。額皮弁の利用は前額部に新たに創を作るという点で整容上の問題はあるが,高齢者にとっては苦痛が少ない方法である。露出した下顎骨および周囲組織または眼窩内容物など,放置すれば骨壊死,眼窩感染,顔面変形,機能障害の原因になる部位を限局的に被覆するために簡便に用いられる。額皮弁は本来は浅側頭動脈を栄養血管とするが,動注化学療法後の上顎癌症例では浅側頭動脈は結紮されている。しかし,筆者らが今日まで経験した5症例の術後経過よりみると,前額正中部までの長さの額皮弁であれば,浅側頭動脈既結紮例においても,皮弁血流に注意して手術すれば安全に用いることができると思われる。また,下顎骨上行脚部の被覆または眼窩底形成の目的のためには前額正中部までの長さの皮弁(hemi-forehead flap)があれば十分である。上顎癌術後の欠損に対して,一次的にまたは二次的に額皮弁を用いて再建術を行った症例をもとに,術式と再建術上の2〜3の問題点をまとめてみたい。
A hemiforehead flap was used in 5 cases for reconstruction of the orbital floor and for covering the exposed ascending ramus of the mandibule after total and subtotal maxillcctomy for maxillary carcinoma.
The superficial temporal artery had been already ligated for utilizing intra-arterial chemotherapy in each case. When evaluated by thermography and selective angiography of the external carotid artery, arterial blood supply of the ipsilateral forehead skin in these cases was apparently diminished but blood circulation of the flaps was still sufficiently sustained.
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